
もし外国人ドライバーが退職したら——。
「退職時の対応」は、多くの企業にとって大きな不安要素ではないでしょうか。
今回、当社で実際にご紹介した外国籍ドライバーにおいて、初めての退職事案が発生しました。
本件では退職後に母国へ帰国されるとのことで、「当社は登録支援機関として、本件の退職対応および帰国手続きに同行しました」
本記事では、現場のリアルと企業が対応すべき実務を解説します。
■今回の事例概要

国籍:ベトナム:ロンさん
年齢:38歳(男性)
勤務期間:2026年1月~2026年3月
業務内容:コンビニエンスストア配送ドライバー(準中型トラック)
もともと技能実習制度で九州にて農業に3年間従事。
「ドライバーとして働きたい!」という想いから関西に移り、特定技能ドライバーとして勤務を開始しました。
母国には18歳のお子様と、これから生まれるお子様がおり、家族を支えるために来日された方です。
■退職に至った理由
退職理由は、業務でミスを繰り返し、自身を失い自ら退職を申し出ました。
検品作業でのミス、横乗り研修中の急ブレーキや信号見落とし。
狭路での接触事故(車両上部の損傷)
こうした出来事が重なり、本人は「自分には向いていない」と判断。
同時期に入社した他の外国人社員が問題なく業務をこなしていたこともあり、比較によるプレッシャーも影響し、退職を決断されました。
■今回の対応内容
退職後は転職ではなく、ベトナムへ帰国。
そのため、以下の対応を実施しました。
住居・ライフライン(電気・ガス・水道)の解約、入管手続き、貸与物の回収。
今回は、帰国当日に密着を手続き、本人の気持ちを聞いてきました。
■【実例】帰国当日の流れ
○出発前(寮)

11:00 寮集合。
本人は終始申し訳なさそうな様子で、会うなり深く頭を下げていました。

下記の事項を確認しました。
アパート鍵の返却、ライフライン停止手続き完了。家具家電は友人へ譲渡をしました。
以下の貸与物も回収しました。
企業から貸与されていた教材、保険証、制服のクリーニング引換書

○移動中

本人に今回の退職についての心境を聞いたところ、こう語ってくれました。
「多くの方に親切にしていただき感謝しています。ただ、自分の力不足でこのような結果となり申し訳ない気持ちです。
最初は日本の交通ルールは安全で、ベトナムにはない譲り合いの精神が素晴らしいと感じ自分もこの業界で働いてみたいと思い始めたが、ドライバーの仕事は想像以上に難しく、自分にはまだ力が足りませんでした。入社のために九州から関西に引っ越し家の準備や仕事の準備のため70万円近くを投資したが無駄になってしまった。残念な気持ちです」
この言葉を聞いて、「やりたい」という気持ちだけでは続けられない職種であることを、改めて実感しました。
○空港での見送り

入社からわずか3ヶ月でしたが、ロンさんは現場からのクレーム対応や私生活の相談が多かった分、単なる紹介関係を超えた関係性が築かれていました。
出国直前、本人は涙を浮かべながら感謝と謝罪を伝え、そのまま帰国されました。
一旦、しばらくベトナムに帰り家業に従事し、日本にまた来るかは決まっていないということでした。
■退職〜帰国までの全体フロー
今回私たちは特定技能ドライバーの退職、手続き、帰国の対応を登録支援機関としてサポートいたしました。
実際の流れについて説明いたします。
▼基本フロー
1退職の申出・退職書類の回収
2社内手続き・引継ぎ
3精算
4入管手続き
5帰国・転職手続き
▼主な対応内容
社内手続き:社会保険の解約(日本人と同様)
精算:立替経費、貸付金の整理
入管手続き:受入れ困難に係る届出(2週間以内)
帰国準備:住居・ライフライン解約(原則本人対応)
■今回最も難航したポイント
最も対応が難しかったのは、事故に伴う弁償問題です。
退職直前にロンさんは、トラックの上部をこする事故を起こしていました。そのため受入企業側は約50万円の修繕費負担を求めましたが、事前説明がなかったという点、本人に支払い能力がない、という状況から話し合いは難航していました。
最終的には双方の話し合いにより折衷案で解決しました。
金銭に関する取り決めは、入社前に明確化しておくことが重要です。
■入管・法的手続きの注意点
今回のケースは本人都合退職でしたが、企業都合での退職には注意が必要です。
・企業都合退職は原則慎重な対応が求められる
・今後の受入れに影響する可能性がある
「適性がない人材をどうするか」という課題は現場でも多く聞かれますが、
重要なのは本人との十分な対話と合意形成です。
■外国人ドライバーの退職に伴う費用リスク
・帰国費用
本人都合:本人負担が基本
企業都合:企業負担の可能性あり
・事故の弁償金
給与から一方的に差し引くことはできません。
本人と協議の上、返済方法を取り決める必要があります。
→未回収リスクもあるため、事前設計が重要です。
■今回の学び・注意点
今回の退職はミスマッチによるものが原因だと考えています。
そのため、今後は下記を徹底する必要があると感じました。
①運転適性の見極め
日本には既に運転免許を所持している外国人ドライバーが数多くいます。
ですが、ただ「運転が好き」「経験がある」だけでは不十分です。
→面接の一環として、運転試験(危険予測、運転適性)は必須。
②事前の取り決め
日本では普通のことも、他国では普通ではないことも多々あります。
事前に説明、取り決めが必要です。例:事故時の負担、途中退職時の対応
③ ミスマッチの防止
ミスマッチが起きると、
求職と受入企業の双方が、時間、お金、体力を無題に失ってしまいます。
ただ紹介するだけでなく、幹和得、教育・フォローまで含めての対応が必要です。
■まとめ
退職という結果の多くはミスマッチが原因です。
本人の意欲や人柄に問題がなくても、
職種に求められる適性とのギャップがあれば、継続は難しくなります。
したがって重要なのは、入社後のフォローだけではなく、
入社前の段階でどこまで適性を見極められるかです。
運転経験や希望といった表面的な情報だけで判断するのではなく、
実際の運転技術、注意力、危険予測といった現場基準での確認が不可欠です。
また、適性の見極めに加え、
事故時の対応や退職時の取り決め、業務水準の共有といった期待値のすり合わせを行うことで、ミスマッチは大きく減らすことができます。
外国人ドライバーの採用は、単なる人手確保ではなく、
適切なマッチングによって初めて戦力化につながるものです。
今回の経験を踏まえ、当社としても紹介のあり方を見直し、
より精度の高いマッチングと、その後の定着支援の強化に取り組んでまいります。


